実際のシナリオの作り方。
巻末についていたマニュアルを全訳してちょっと解説を足した。(※かなり意訳)
STEP1:重要な問題、決断をはっきりさせる。
まず今何が問題で、何を決断するのかをはっきりさせる。
例えば、中古車販売業者だったとして、「核戦争が起こって街が壊滅したら?」とかについてシナリオを作っても仕方ない。
なぜなら、仮に核戦争が起こるとして・・・・・・
・・・・・・中古車販売業者が今どう行動しても、結局起こるじゃねーか!
だから今自分にとって
「何が問題で、何を決断したいのか 」をはっきりさせておかなければならない。
例えば「新しい工場を作るべきか」「海外に事業展開するべきか」「家を買うべきか」 などなど。
先に決断したい事ありきで始まるので、シナリオはいつもその人、その企業しか使えないものになる。
自動車メーカーで作った原油価格の推移などのシナリオは、映画会社にとっては何の役にも立たないからだ。
STEP2:<キーファクター>をリスト化
自分の決断の成功に直接影響を与えそうなものをリストアップする。
ここでリストアップされたものを<キーファクター>と呼ぶ。
あくまで直接影響を与えるものをリストアップする。
自動車メーカーなら「燃料価格」「中国インドの市場」「国内の消費者の変化」などなど。
ゲームメーカーなら「ゲームハードの売り上げ」や「開発コスト」「消費者の嗜好の変化」などなど。
STEP3:<ドライビングフォース>
キーファクターを左右するもっと大きな環境要因をリストアップする。
これらを<ドライビングフォース>と呼ぶ。
例えば、「人口の推移」や「中東情勢」などなど。
この中で確実に予想できるものと、そうでないものがある。
なので、ドライビングフォースを<確定ドライビングフォース>と<未確定ドライビングフォース>に分ける。
<確定ドライビングフォース>はどんなものかと言うと、典型的なのが人口。
例えば、2020年の25歳の人口はもう分かっている。日本はしばらく少子高齢化なので、国内の若年層の市場規模は縮小してゆく。
また、 「パソコンの性能が良くなっていく」 とか「ネットワークのスピードが上がる」のように、どう考えてもこうなりそうだ、というものも、<確定ドライビングフォース>と考えてもいいだろう。
<未確定ドライビングフォース>はどんなものか。
典型的なのは景気、政治。
他にも携帯電話のシェア、アメリカの大統領選の行方、ライバル他社の戦略などなど。
ドライビングフォースを決めるには市場、経済、新技術、政治などを一通りリサーチする必要がある。
STEP4:ランク付け
次はキーファクターとドライビングフォースを二つの基準でランク付けする。
一つ目は決断の成功への影響力。
二つ目は不確実性レベル。
これをランキング付けしたら、不確実なもので最も影響が強いものを2、3個選ぶ。これがシナリオの軸、<シナリオ・ドライバー>になる。
もちろん「ベビーブーム世代が歳を取る」などの<確定ドライビングフォース>は全てのシナリオで同じになる。
STEP5:シナリオロジックの選択
前のステップでのランク付けが最終的にシナリオの軸になる。
ここが最も重要なステップだ。
いろいろな軸が出てくるだろうが一番致命的で、不確実な軸を発見する。
そして最終的には決断に影響する3つのシナリオにまとめる。
例えば、自動車会社が「燃料価格」と「保護主義」がシナリオドライバーと定義したら、以下のように表(マトリックス)にはめてみると分かりやすいだろう。
①保護主義○ 燃料価格× ⇒ アメリカの小さな自動車販売会社には有利。
②保護主義× 燃料価格× ⇒ エコカーの輸入車が市場のローエンドを占める。
③保護主義○ 燃料価格○ ⇒ アメリカの燃費の悪い車がアメリカ国内で売れるが海外ではダメ。
④保護主義× 燃料価格○ ⇒ 燃費の国際競争が激化。しかし、大型のアメ車は海外市場でも売れる。
STEP6:シナリオの肉付け
STEP⑤で出てきたものに、STEP②、③で見つけた<キーファクター>と<ドライビングフォース>のリストにを使ってシナリオに肉付けしてゆく。
どの要素もシナリオごとに注意を払うべきだ。
あるシナリオでは影響のなかったものが別のシナリオでは、いろんな要素と絡み合ってもの凄く影響が大きくなるものがあるからだ。
そして、それらのピースを組み合わせて物語を作り出す。
「どのように世界がここからあそこへ行くのか?」
「シナリオにリアリティを持たせるにはどんな出来事が必要か?」
STEP7:決断にどう影響するか
シナリオがある程度固まってきたら、未来をリハーサルするために、STEP①で決めた<決断>
に立ち戻るときだ。
各シナリオでこの決断はどう見える?
どんな脆弱性が露わになっただろうか?
全てのシナリオでこの決断はうまくいくだろうか?それとも1、2のシナリオでだけ?
もしも、1つのシナリオの中でしかうまくいかないなら、この決断はリスクの高いギャンブルだと言えるだろう。
最終STEP:指標(インジケーター)の特定
どのシナリオが現実になるかを知ることは重要なことだ。
景気などは比較的予想し易いだろう。
だが、次にどのシナリオに転ぶか分からないときもある。
例えば、日本の社会構造はいつ変化するだろうか?と言ったような場合。
どんな統計を読めばそのシナリオに向かっていると判断できるだろうか
人口?国家予算?○○党の議席数?
肉付けされたシナリオを見て、それを指し示しそうな指標(インジケーター)を特定する。
<指標>をチェックすることで、今どのシナリオに向かって世の中が動いていくかを予想することができるだろう。
TIPS
① 3つのシナリオにする際の注意点
シナリオに慣れていない人達は3つのシナリオを作ろうとして
”1種類の3つのシナリオ” 作ってしまいがちだ。
①が「ミドル」と②「最良」③「最悪」のように。
これだと複数のシナリオの良さは失われてしまう。
あるシナリオが他のシナリオと被ってしまう場合、それらはボヤけ始めて意思決定ツールとしての意味を失ってしまう
② 確率を使わない
確率は考えないようにする。なぜなら
最も高い確率のシナリオしか考えなくなりがちだから。
どうしても確率を考慮するなら「同じ確率のシナリオ2つ」と、「確率が低いが影響が大きいワイルドカードのシナリオを2つ」作る。
また、シナリオ同士の確率を比較するのは良くない。
なぜなら、この二つのシナリオは根本的に違う環境(ドライビングフォース下)で起こるだろうからだ。
③ シナリオの名前には気を遣う
シナリオの名前が
覚えやすくてインパクトがあれば、その会社の意思決定のときに多くのチャンスがあるだろう。
なぜならその名前がコンセプトを強烈に喚起するからだ。
シェル石油では「内部矛盾の世界」という名前のシナリオは10年以上も使われ続けた。
④ シナリオチームの人選
第一に決定権を持つ幹部クラスの参加とサポートが必要だ。
第二に広い分野に知識を持つスタッフが必要だ。
第三にチームとしてやっていける想像力豊かでオープンマインドな人を探す。
⑤ 最後に
シナリオがあり得そうで、驚くようなものになったとき。
そして、それらが古いステレオタイプを打ち破る力を持ち、
シナリオ制作者が責任を持ってそれを仕事に使えるとき
あなたは良いシナリオを作った、と言っていい。
シナリオ作りは強烈な参加型の作業だ。そうでなければ決して成功しない。