2012年2月20日月曜日

『The Art of the Long View』 Peter Schwartz 2




実際のシナリオがどんなものかこの本に、15年後の未来について書かれたシナリオの例があるので、実際どうだったか検証の意味も兼ねて紹介。

ちなみにこの本が書かれたのが1991年。予測される未来は2005年だ。

91年の世界は何が起こっていただろうか。

二年前にベルリンの壁が崩れ、この年にソ連が崩壊。、イラクがクウェートに侵攻して湾岸戦争が勃発。ちょうど冷戦後の次の世界が始まろうとしていたころだ。

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①「New Empires」  

保護主義が台頭し、世界大戦前のようなブロック経済圏が対立している世界
ひとつ目はアメリカや日本、カナダなどの<太平洋ブロック>。
対するのはヨーロッパとロシアの同盟<ヨーロッパブロック>。
この2つ以外の経済圏は、中東、北アフリカ、ラテンアメリカの近隣諸国が作る小さな同盟がいくつかある。 インドと中国は独自の道を行くだろう。  
ただ、メイン2つのブロックがほとんどの資源や産業を占有することになるだろう。

経済は保護主義的で、関税が高まる。
官僚の力が強くなり政治的な改革は難しくなるだろう。
自由貿易が行われるのはブロック圏内の国同士でのみだ。

アイデンティティは大きな問題になってくる。 国内では民族主義者の人々と同盟を重視する人々の間で争いが起こるだろう。  
文化面ではアイデンティティを求めて民族的な芸術、音楽、言葉、ファッションが復活する。  

このシナリオでは60年代の冷戦のように戦争が起こりやすい。
武器の貿易が活発化し、なんと言っても2つの大きなブロックが核兵器を持っている。
またコンピュータを使って敵国の金融システムを攻撃することも行われるだろう。
実際にどのような戦争が起こるかは予想が難しいが、ライバルの経済圏同士で経済の全面競争をし始めると、第一次、第二次世界大戦のような大規模で制御不能な戦争になる危険性がある。


② Market World

イデオロギーや価値観の対立よりも、お金を儲ける事こそが全ての世界だ。
世界が一つの市場のようになっていき、ありとあらゆるものについて国際的なビジネスルールが定まってゆくようになる。  

こうして作られたグローバル市場経済は勝者総取りの熾烈な競争世界だ。この競争ではスリム化したイノべイティヴな企業だけが生き残るだろう。  
政府の役割は市場操作ではなく、自由な市場を作ることになるだろう。それは競争を促すためのインフラ整備であったり、規制緩和であったり、教育であったりする。特に教育は重要だ。イノベーションと変化が激しい世界ではいかに早く学べるかが重要だからだ。 教育社会を実現した国は大きく成長するだろう。  

テクノロジーへの投資が加速し、新しいメディア、服、食べ物、エンターテイメントが次々と現れる。   
 
また、ほとんどの国で人口が減少し始める。政府の政策ではなく豊かさと避妊や人工授精などの技術の影響によってだ。

ヨーロッパはグローバル化に適合し、世界経済をリードするだろう。日本はお金を持っているが、アメリカの協力なしでは何も外交できないのが欠点だ。

この世界では多くの人が豊かになれる一方で、格差が開き、多くの人々が貧しいまま取り残されている。
お金だけが全てではないと考える人たちの中で共産主義や民族主義が盛り上がるだろう。例えるならこの世界は日本の盆栽のようだと言えるかもしれない。美しいが、小さな鉢の中に入っている。    


③ 進歩なき変化

Market Worldの悪いバージョンのシナリオだ。
どの国も自己中心的で、互いを出し抜くことばかり考えている。
例えば、チベットの人権侵害を理由にインドが中国に宣戦布告し、どさくさ紛れにネパールを併合してしまうといったような事が次々と起こるだろう。
どの国も「敵の敵は味方」といった短絡的で一貫性のない外交を繰り返す。ECは崩壊し、遠い過去の幻想となる。もはや世界が協力し合うなどと想像するものはいない。

イノベーションはギャンブルに等しい。投資家は投資ではなくリスク回避に熱心だし、政府もインフラ整備をする余裕がないため、せっかく可能性がありそうな新技術の芽もついえてしまうだろう。

ゴミの山とスラム街が広がり、 そのすぐ隣には高級住宅街が高い壁とガードマンに守られている。これがこの世界のごく一般的な大都市の姿なのだ。  


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こうして振り返ってみると、二番目の「Market World」はなかなか当たっている。
とはいえ、911からのイラク戦争のような突発的な事件は予想できてないし、インターネットのような発明も予想できていない。

やはり〈発明〉や〈ブラックスワン的な事件〉はシナリオ・プランニングでも絶対に予想できないのだ。

「なぁんだ未来は結局分からないじゃないか。」と思うかもしれない。

しかし、ここでふと考えてみよう。



いったい、自分達は未来を予想してどうしたいのか?



もちろん未来に合わせて行動したいのだ。
金融危機に備えて、リスクを避けるとか。チャンスを逃さず工場を建てるとか。家を買うとかだ。

そう。大切なのは未来をズバズバと当てることではない。実際に良い行動を取るための材料を得ることこそが重要なのだ。



「明日は今日の続きだ。今までどおりの仕事を続けていけばいいのさ」という考えに凝り固まった頭を刺激し、「こんな未来になったら大変だ。備えなければ!」と思わせる。
これこそがシナリオの役目なのだ。


だから「当たりそうだけど頭を刺激ないシナリオ」などいくら作ってもしょうがない。


なので、シナリオは未来を知る方法というよりは決断ツールだと言えるかもしれない。


この例のシナリオで言えば、②のMarket Worldが来る兆候を見て取ったら、「国内向けの製品からグローバル対応した製品作りにシフトする」といった行動が取れるはずだ。